自己破産した人でも、クレジットカードは作れる?
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会発行の『2014年破産事件および個人賛成事件記録調査』を見ると、自己破産の背景が人によってまちまちであることがわかります。
事情があって過去に自己破産してしまった。けれど今は定職についていて、安定した収入もある。生活に便利なクレジットカードを作りたいけれど、
過去に自己破産した身でも作れるのだろうか。自己破産から何年経っていれば、審査に申し込めるのだろうか――
そんなふうに悩んでいる方が多いのも事実なのではないでしょうか。
結論からいうと、自己破産してもクレジットカードを作ることは可能
自己破産とは、裁判所から支払いが不可能だと認められて免責が許され、すべての債務の支払い義務が免除されることです。
自己破産の手続きにあたっては、司法書士・あるいは弁護士などの専門家を書類作成代理人・代理人として自己破産・個人再生申立書を作成する必要があります。
裁判所から認められ免責が許された場合、税金や借入を支払う義務はなくなりますが、自己破産した後に所有している資産の処分や、裁判所の許可がなければ長期旅行や転居ができないなど生活上での制限、
手続きが完了するまで弁護士や公認会計士などになれないという職業の制限などが発生するほか、
債権者である金融機関によって「自己破産した」という情報が債務者の個人信用情報機関に登録され、最低5年間いかなる借り入れも不可能になります。
クレジットカードも借り入れにあたるので、この期間に関していえば、新規作成は基本的には不可能です。
つまり、自己破産した方でもクレジットカードを取得することは可能ですが、あくまで個人信用情報機関に登録されている自己破産の情報が消えたあと、ということになります。
自己破産の情報は個人信用情報機関に登録される
自己破産はもちろん、
たとえば借り入れたローンの支払い遅延や任意整理などの俗にいう「ブラックリスト入り」と呼ばれる情報(これらは「事故情報」「異動情報」と呼ばれます)は、「個人信用情報機関」と呼ばれる機関に登録されます。
個人信用情報機関には、個人の契約内容・支払い状況(カードローンや住宅ローンなどの利用履歴)をはじめ、支払い延滞や自己破産など、過去のクレジットヒストリー(クレヒス)などの信用情報が登録されており、
各クレジットカード会社は、クレジットカード入会審査において適切な審査を行うために最低ひとつの個人信用情報機関へ加盟し、登録されている信用情報を審査の参考にしています。
現在、日本で稼動している個人信用情報機関は、以下の3つになります。
さらに金融事故情報は、個人信用情報機関同士の相互ネットワークで共有される
各個人信用情報機関は、「CRIN(クリン)」と呼ばれる情報共有ネットワークで、自己破産や3ヶ月以上の支払いの延滞などの事故情報を共有しています。
このため、クレジットカード会社Aが加盟しているCICには申込者の個人信用情報が登録されていなかったとしても、CRINのネットワークを利用すれば、JICCや全銀協など他の個人信用情報機関に事故情報が登録されていないかを照会することができ、クレジットカード審査の合否を判断する際の参考にすることができるのです。
自分が迷惑をかけたクレジットカード会社のクレジットカードは作ることができない
たとえ自己破産から長期が経過していても、過去に迷惑をかけてしまったクレジットカード会社、自己破産時に債権者であったクレジットカード会社が発行しているクレジットカードに関しては、基本的には作ることはできないということを頭に入れておきましょう。
過去にお金を貸した人が、お金を返さないままどこかへ消えてしまい、また急にふっと現れて「お金貸して」といわれても、貸したい気持ちにはなりませんよね。クレジットカード会社も、それと同じことです。
クレジットカード会社が審査時に重要視しているのは、申込者の「信用力」なので、自己破産後しばらくして自己破産時に持っていたクレジットカードとは別のクレジットカード会社のクレジットカードを作り、信頼に値するクレジットヒストリーを築いたうえで再度過去に自己破産して迷惑をかけたクレジットカード会社の発行するクレジットカードに申し込んだとしても、そのクレジットカード会社的には苦い思い出があるわけですから、結果は同じことでしょう。
自己破産後10年であれば、クレジットカードに申し込んでOK
では、自己破産後どのぐらいでクレジットカードを作ることができるようになるのでしょうか。
先ほど述べた個人信用情報機関から自己破産の情報が完全に消えてしまえば、登録されている情報としては「何もなかったこと」になります。
各個人信用情報機関の自己破産情報の保管期間は、以下のようになっています。
契約継続中および完済日から5年を超えない期間(最長5年)保管される
契約継続中および完済日から5年を超えない期間(最長5年)保管される
官報情報(官報に公告された破産・民事再生開始決定等)が当該決定日から10年を超えない期間(最長10年)保管される
つまり、CICとJICCに関しては最長5年、全銀協に関しては最長10年間、情報が保管されます。
CICとJICCでは情報が消えた後も、全銀協では自己破産したとの情報が残っています。
CRINによってこの情報は共有されますから、確実にクレジットカードを取得したいのであれば、10年後をめどに新たにクレジットカードを作るようにしてください。
申し込んだクレジットカード会社がCICとJICCの情報しか参考にしない場合、自己破産して5年後以降にクレジットカード審査に申し込んでも、審査に通過する可能性が高いともいわれています。
なお、自分自身の個人信用情報は開示することが可能です。
クレジットカード会社に自分の事故情報などのクレジットヒストリーがどのように表示されているかを確認できれば、どこが問題なのかが把握できるため、一度情報を開示して、自分の個人信用情報を再確認してみることをおすすめします。
自己破産者がクレジットカード審査に通過するためには、コツが必要
では、個人信用情報機関から事故情報が消え、完全にまっさらな状態になったときに、クレジットカードをすぐに作成することは可能なのでしょうか。
5年ないし10年がたって個人信用情報から過去の事故情報は消えますが、同時に過去のクレジットヒストリーがすべて消えてしまいます。
これは「過去にクレジットカードやローンなどを一度も利用したことがない人」か「過去に自己破産などをしてクレジットヒストリーを一掃した人」のどちらかになります。
どちらであっても、審査をするクレジットカード会社からすると申込者本人の支払い能力が判断できないため、審査に通りづらくなる可能性があります。
では、どうすればよいのでしょうか。
大切なのは、まずは身近なところで分割払いやリボ払いなどのローンを組んで課された金額毎月確実に返済し、正常なクレジットヒストリーを積み重ねて「信頼できる人物である」ことを証明することです。
先ほども述べたとおり、自己破産の情報が信用情報から消えた後、クレジットヒストリーはまっさらな状態になるため、審査をするクレジットカード会社側からすると信用力の判断がつかず、審査に通りにくくなる可能性が高くなります。
クレジットカード審査に通過するのが厳しいのであれば、最初は携帯電話端末を分割で購入する、審査が通りやすいカードを作るなどして、まずは正常なクレジットヒストリーを積み重ね、「信用力」をしっかり鍛えたうえで、自分が作りたいと思うクレジットカードに申し込むことをおすすめします。
デビットカード利用ではクレジットヒストリーは築けない
なお、カード決済時すぐに引き落とし口座から利用金額が引き落とされるデビットカードの利用は、個人信用情報とは関係してきません。
デビットカードの場合、支払い履歴はおろか、デビットカードが発行されたという事実すら個人信用情報には登録されないからです。
どれだけデビットカードを利用しようとクレジットヒストリーは築くことができないので、便利さのために利用する分にはよいのですが、もし後々のクレジットカードの作成を考えてデビットカードを利用しているのであれば、これは間違いです。
身の丈に合わないクレジットカードの使いすぎも自己破産の原因になりうる
「買い物がしたくてつい軽い気持ちでキャッシングを利用したら、それを返済するために別のキャッシングを利用、そのキャッシングを利用するためにまた別のキャッシングを利用…と自転車操業になってしまい、最終的に自己破産した」という多重債務による自己破産は、聞かれる話です。
くれぐれもしっかり自己管理するようにしましょう。
クレジットカード現金化は、自己破産すらできなくなってしまう可能性も
クレジットカードやカードローンのキャッシングをすでに限度枠いっぱいまで借り入れてしまい、ほかに借りるあてがないけれども、現金が必要…
そんな理由から、クレジットカード現金化に手を出す人がいますが、まず避けたほうがよいでしょう。
クレジットカード現金化は、クレジットカードのショッピング枠を利用して商品を購入し、その商品を業者に転売すると、業者側から手数料を引いた金額がキャッシュバックされるしくみです。
キャッシング枠を利用することなく、ショッピング枠での利用が可能なので、キャッシング枠をなんらかの事情で使えない人にとっては、一見ありがたいサービスのように感じます。
しかしクレジットカード現金化に関しては、完全に違法と言い切れるわけではありませんが、法律の網目をかいくぐったグレーゾーンのビジネスであることに変わりはなく、また、クレジットカード会社の会員規約で、現金化を目的とした利用は禁止されており、もしクレジットカードのショッピング枠を現金化のために利用していることがばれると、そのクレジットカードが利用停止になる可能性もあります。
さらにクレジットカード現金化を利用したという事実は、自己破産の際に破産法252条1項2号に該当します。
破産手続きの開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと
返済資金や生活費を捻出するためにクレジットカードで商品を購入し、著しく安い価格で売却した場合、この法律に該当するとされて免責不許可事由となってしまう、すなわち自己破産ができなくなる可能性が出てくるのです。
クレジットカード現金化に手を出し、そのときだけ現金を手にしても、後々の代償は大きいです。気軽な気持ちで手を出さないようにしましょう。