VISA、MasterCard、JCB…何が違う?国際ブランドの違いと、おすすめのブランド
JCBやMasterCard(マスターカード)などいくつかのブランドと提携しているクレジットカードの場合、クレジットカードを申し込む際にいずれかを選ぶ必要があります。
実は、ブランドによって、クレジットカードが利用できる加盟店や、付帯しているサービスが結構異なるのです。
- クレジットカード利用のためのプラットフォームを提供しているのが「国際ブランド」
- 最初に言っておくと、どの国際ブランドかによっては、クレジットカードが利用できないこともある
- クレジットカードのしくみ:「ブランドホルダー」、「イシュア」、「アクワイアラ」を理解する
- ブランドホルダーが発行しているクレジットカード「プロパーカード」と、イシュアが発行代行する「提携カード」
- プロパーカードと提携カード、どちらがお得か?
- 国際ブランドは主に5つ
- シェア率からすると、海外旅行に行くならおすすめのブランドはVISAかMasterCard
- 海外に行くなら、VISAかMasterCardは1枚持っておくこと。念のために複数枚が安心
- 各ブランドの特徴・メリット
- 台頭してきた中国ブランド「銀聯(ぎんれん)カード」
- ブランドを変えたい場合、変更は可能?
- まとめ:おすすめのブランドはどれ?
クレジットカード利用のためのプラットフォームを提供しているのが「国際ブランド」
クレジットカードをすでにお持ちの方はご存知だと思うのですが、カードの表の右下に、「VISA」や「MasterCard」と書かれたロゴが入っていませんか?
このカードであれば、カードの右下に「MasterCard」というロゴが入っているので、MasterCardがクレジットカードを発行している国際ブランドになります。
「VISA」とロゴの入ったクレジットカードであれば、VISAが、「JCB」とロゴが入ったクレジットカードであればJCBが、クレジットカードを利用するためのプラットフォームを持っています。クレジットカード決済を行う「決済機構」なのです。
ところが、VISAなら「VISAカード」というクレジットカードが1枚あるというわけでなく、楽天カード、セゾンカード、ANAカード…いろんなクレジットカード発行会社が発行しているクレジットカードに「VISA」というロゴが表示されているので、どういうことなの?と思ってしまいますよね。
適当に、「どの国際ブランドでも一緒だから、どれでもいいや」とチェックを入れていませんか?
最初に言っておくと、どの国際ブランドかによっては、クレジットカードが利用できないこともある
だからといって、どのブランドでも良いわけではありません。
具体的にいうと、日本ではどこでも利用できるJCBですが、海外では利用できないことも多いのです。
なぜなのか、以下で説明していきますね。
クレジットカードのしくみ:「ブランドホルダー」、「イシュア」、「アクワイアラ」を理解する
クレジットカード業界では、VISAやMasterCardなどの決済機構をブランドホルダーと呼び、クレジットカードを発行し、実際にお金を立て替えてくれる会社をイシュア、クレジットカード加盟店向けのサービスを行っている会社をアクワイアラと呼びます。
- イシュア Issuer
発行する人。会員に対しクレジットカードを発行(貸与)するカード会社を指す。カード発行業務ともいう。
- アクワイアラ Acquirer
手に入れる、権利を獲得する人の意。加盟店からその売上伝票を受け入れ、会員に代わって代金を支払うカード会社を指す。加盟店管理業者ともいう。
『クレジットカード用語事典[第3版]』末藤高義著/民事法研究会/2011年2月 より引用)
たとえば、楽天カードを作る際、同じ楽天カードでも、VISA、MasterCard、JCBからブランドが選べます。
以下のクレジットカードの場合、ブランドはMasterCard、イシュアは楽天カード株式会社になります。
世界中のMasterCard加盟店でクレジットカード決済が可能ですし、「楽天カード会員」として楽天のサービスも利用できます。
同じ楽天カードでもロゴがVISAであれば、VISAを発行しているVISAインターナショナルがブランド、イシュアが楽天カード株式会社となります。
クレジットカードをお持ちの方は、ご自身のクレジットカード裏面を見ると、クレジットカードの国際ブランドとは別にカード発行元(「楽天カード株式会社」や「三菱UFJニコス株式会社」など)が記載されているのを確認できます。
ブランドホルダーが発行しているクレジットカード「プロパーカード」と、イシュアが発行代行する「提携カード」
さて、各国際ブランドもクレジットカードを発行しています。
たとえば、JCBはJCB一般カード、JCBゴールドカードなど、「JCB」とカード名にうたった自社ブランドのクレジットカードを発行しています。
この場合、ブランドはJCB、イシュアもJCBになります。
このように、ブランド自体が発行しているクレジットカードをプロパーカードと呼びます。
一方で、先ほどの楽天カード(MasterCard)のようなクレジットカードは、イシュアである楽天カード株式会社と、ブランドホルダーであるMasterCardが提携して発行しているクレジットカードになり、提携カードと呼ばれます。
プロパーカードと提携カード、どちらがお得か?
では、プロパーカードと提携カード、いったいどちらがお得なのでしょうか。
プロパーカードだからといって、特に優遇されるということはないと思います。
たとえばJCBの例でいうと、ブランドホルダーがJCB、イシュアが楽天カードである場合(JCBブランドロゴの入った楽天カード・楽天カードJCB)とブランドホルダーがJCB、イシュアJCBであった場合(JCBカード、JCBカードゴールドなど)、イシュアであるJCBも楽天カードも、いずれもポイントサービスや家族カードの発行、ETCカードの無料発行など会員に向けたさまざまな優待サービスを用意しています。
そこを比較する際にポイントになるのは「自分がどうクレジットカードを利用したいか」。
それによって、どちらがお得かということも変わってくるからです。
また、年会費や発行手数料に関しては、各イシュアが決定していて、ここに関しても、プロパーカードだから、提携カードだから安い高いということはありません。
一点、プロパーカードならではのサービスもあります。
プロパーカードのメリットとして、長くずっと愛用し、信頼関係を築くと、招待制クレジットカードのインヴィテーションが届く可能性があります。
JCBカードゴールド利用者の場合、JCBゴールドカード会員の利用実績や年間利用額に応じて、JCBのプラチナカードであるザ・クラス(年会費50,000円(税別))へのインヴィテーションが届きます。
このインヴィテーションは、送られたJCBゴールド会員にのみ有効で、一般の人は申し込めません。
近年では年会費をしっかり払い、個人信用情報に問題がなければ直接プラチナカードに申し込めるプラチナカードも多数ありますが、招待制クレジットカードとなると特別感も大。
それだけでなく、世界中の空港ラウンジが利用できるプライオリティ・パス、一流のコンシェルジュサービスなど、付帯しているサービスも非常に充実しています。
インヴィテーションが届く具体的な条件(年間何円以上の利用など)は公開されていません。
また、MasterCardやVISAのプロパーカードはありません。(発行していません。)
国際ブランドは主に5つ
ブランドホルダーのなかでも、国際ブランドと呼ばれるのはVISA、MasterCard、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースカードの5つです。
うえでも少し書いたように、このなかで、JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースカードはプロパーカードを発行していますが、VISA、MasterCardは発行していません。
各ブランドに特徴や強みがあるので、理解したうえで選ぶようにしたいですね。
余談ですが、クレジットカードの入会審査について、ブランドごとで基準が異なるかどうかを気にする方もいるようですが、これはブランドホルダーではなく、発行会社であるイシュアに託されています。
シェア率からすると、海外旅行に行くならおすすめのブランドはVISAかMasterCard
クレジットカードの国際ブランドに関して、よく「どれにすればいいの?」とか「どう違うの?」という質問を受けるのですが、どの国際ブランドのクレジットカードを持つのが良いのでしょうか。
海外に行く予定があるのであれば、VISAかMasterCardを1枚作ることをおすすめします。
理由は、世界のシェア率を見るとVISAとMasterCardが圧倒的に多いからです。
以下、各国際ブランドのシェア率になります。
各クレジットカードの会員数
- VISA…240,200万人
- MasterCard…143,700万人
- アメリカン・エキスプレス…11,220万人
- JCB…8,958万人
圧倒的にVISAホルダーが多く、次いでMasterCardホルダー、そこから10分の1以下の会員数がアメリカン・エキスプレスホルダー、さらに少ないのがJCBカードホルダーとなっています。
この会員数が何を表しているかというと、会員数が多いということは、すなわち加盟店数(加盟店舗数)もそれだけ多くなり、世界規模でいえば国際ブランドのなかでVISA、ついでMasterCardのシェア率が圧倒的に高いということです。
つまり、もし海外へ行く機会が多い方であれば、VISAかMasterCardを1枚持っていくことをおすすめします。
JCBは日本のブランドで、日本国内でこそ不自由なく利用できますが、海外の場合はそうもいきません。
海外へ…しかしJCBが使えず、VISAを作り直した話
個人的な話になりますが、私は大学卒業とほぼ同時期にJCBカード(提携カード)を作りました。
ネットショッピングが台頭し始めた時代で、たまにクレジットカードでネット通販をする程度の利用、あとは近所のスーパーでクレジットカード決済すると5%オフになる日があり、時々利用する程度だったので、利用しているなかで特に不便には感じませんでした。
しかし、学生から新社会人になり、新社会人からさらに時が経ってくると、行動範囲や趣味の対象、価値観も変化してきます。
当時没頭していたヨガでインストラクターコースを学ぶために海外へ行くことに決めた私は、学校を決定していざ振込み…というところまで来て、重大な事実に遭遇しました。
なんと…コース授業料支払いがJCBに対応していなかったのです!
人気のコースだったので、どんどん席は埋まっていくし、かといってすぐに支払いに対応しているVISAかMasterCardのクレジットカードを作る必要があり、非常に焦ったのを覚えています。
無事VISAカードを手にして、やっとコース申し込み完了。このときから、国際ブランドを意識するようになりました。
海外に行くなら、VISAかMasterCardは1枚持っておくこと。念のために複数枚が安心
JCBは手厚いサービスに定評があり、日本国内ではなんら不自由のないクレジットカードですが、海外に行くのであれば、決済カードとしてやはりVISAかMasterCardを持っていくようにしましょう。
ハワイやグアム、香港など日本人観光客に人気の観光地で、なおかつ日本人が多く訪れる場所ならJCBが利用できるお店もありますが、人気の観光地であってもローカルなレストランや土産屋などでは、JCB1枚では利用できないお店が出てくる可能性があります。
VISA、MasterCardは両方とも利用できる場所が多いですが、利用できない店がある可能性もあるので、不安な方は両ブランドを持参すると、なお安心です。
各ブランドの特徴・メリット
JCB
唯一の日本発ブランドであるJCB。
海外だと、決済カードとしては利用できない可能性があるとは書きましたが、実はJCBは会員に向けて、海外旅行時のサポート窓口・JCB PLAZA(JCBプラザ)を用意しています。
これは、世界60カ国に設置された、JCB会員の海外旅行をサポートしてくれるサービスです。
具体的には、JCB加盟店の予約や観光に関する問い合わせなど、日本語で対応をしてくれるので、ショッピングやホテル代・レストラン代の支払いとは別にサブカードとして1枚持っていくと安心です。
VISA
世界最大のカード発行枚数と売上高を誇るVISAはシェア率ナンバー1だけあって、世界中で一番利用できる場所が多いクレジットカードです。
ローカルな場所にあるお店、ローカルの方たちがそもそもクレジットカードで買い物をしないようなお店(屋台や大衆食堂や、ローカルなマーケットなど)であれば利用できないこともあるでしょうが、都市であれば観光客だけでなく現地の方もクレジットカードを利用しますし、VISAが1枚あれば各国でショッピングができます。
どこでも利用できる可能性が一番高いというのがそのメリットですね。
MasterCard
VISAに同じ。無難に支払いができるクレジットカードです。
MasterCardの「マイナーマスター問題」とは何だったのか
MasterCardは過去に「マイナーマスター問題」とう問題がありました。
MasterCard加盟店であるにもかかわらず、MasterCardで決済しようとすると、クレジットカードが利用できないという問題です。
この問題の背景としては、日本でMasterCardが発行され始めた当時、イシュアであったクレジットカード発行会社が各社独自の加盟店・システムを開拓し、ここに互換性がなかったことが原因です。
「MasterCardを持っているのに、一部のMasterCard加盟店でMasterCardが利用できない」という現象が発生してしまいましたが、現在、この問題はほとんど解消しているといってよいでしょう。
アメリカン・エキスプレス
ステータス性のあるクレジットカード、「ステータスカード」の代名詞ともいわれるアメリカン・エキスプレス。
トラベル&エンターテイメントの分野において、会員限定の充実したサービスは、他ブランドの追随を許しません。
ただ、シェア率を見てもわかるように、会員数がぐっと減り、加盟店もVISAやMasterCardに比べて少ないので、旅行分野以外での場所で利用できる場所が限られてしまうのが難点です。
アメリカで生まれたブランドで、「アメリカン」というだけに、北米で利用できる場所が多いのかな?と思っていたのですが、そういうわけでもないようです。
カナダ・バンクーバーではアメックスに対応していないお店がありました。
ダイナースクラブ
アメリカン・エキスプレスとダイナースクラブに関しては、利用できる場所は少なくても、やはりステータスカードであり、レストランやホテルで優遇される点がそのメリットです。
台頭してきた中国ブランド「銀聯(ぎんれん)カード」
「銀聯(ぎんれん)カード」というカードを目にする機会が増えているように思います。
これは中国銀聯という、中国の企業が発行しているカードです。
銀聯ブランドは、現在なんと50億枚以上発行されています。ただ、このうちの45億枚はデビットカード(プリペイドカードを含む)であるようです(『月間消費者信用 2015年9月号』より)。
しかし、取扱高は年々増加していて、中国へ旅行や出張に行く方なら、都市部のみならず、地方都市でも圧倒的に加盟店の多い銀聯カードは中国への渡航に必須の1枚となりつつあります。
三井住友カードが、銀聯カードとの提携カード「三井住友銀聯カード」、「ANA銀聯カード」を発行しています。また、MUFGカードは追加のオプションとして銀聯カードが利用できるようになっています。
ブランドを変えたい場合、変更は可能?
さて、すでにクレジットカードは持っていて、そのイシュア(発行元)は変えたくないが、ブランドだけ変えたい!という場合、変更は可能なのでしょうか。
楽天カードを例にとってみましょう。
というのも、楽天カードの場合、ブランドがJCBである場合においてのみ、電子マネーnanacoに楽天カードJCBからチャージした場合、コンビニでの公共料金支払いでもポイントがもらえる、というブランドがJCBの場合においてのみお得になる方法があるのです。
「公共料金の支払いや税金でもnanacoポイントが貯まる」と巷でもお得といわれる活用法ですが、その方法については、こちらの記事で詳しく書きました。
損してない?!コンビニはクレジットカードが断然お得&公共料金支払いで得する裏ワザ
この方法を知って、すでにVISAの楽天カードや、MasterCardの楽天カードを持っているけれど、「同じ楽天カードでもJCBに乗り換えたい!」という場合、簡単に国際ブランドを変更できるのでしょうか。
調べてみたところ、楽天カードの場合、国際ブランドの変更は不可能です。
現在のクレジットカードをいったん解約→再度新規申し込み
が必要になります。
まとめ:おすすめのブランドはどれ?
クレジットカードの各ブランドについて書いてきました。
結局、各ブランドのスペックはそれぞれ個性やメリットがあり、簡単に比較できるものではありません。この点で大差はなく、いうならば「シェア率が大きく異なるため、ブランドによっては海外で利用できないこともある」という点が大きな違いになります。
賢く使い分ける参考にしてみてくださいね。
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